道生の果てしない話



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  *玉鋼の鉋の結果報告 08.2.20 
   *玉鋼の鉋の途中報告 07.10.15  
*玉鋼の鉋ついて   
07.9.8 

      *球状化セメンタイトの刃物について
*玉鋼について私が思うこと 







玉鋼の鉋を使った結果報告です。
(08.2.20)
07・10月31日のなかおかさんブログより









玉鋼の鉋の途中報告
(07.9.15)

関の削ろう会で、玉鋼の鉋を買って頂いた方より
欠けると話をお聞きしましたが、
私としては、間違いない所で玉鋼を鍛錬して頂き
(刀匠の方より)
玉鋼の特性や炭素量の低い事を考え、
その方に納めた鉋は柔らか過ぎないよう
焼戻しを低めに設定しして作りました。

お客様には、そのお話をし理解して頂き
焼戻しで調整する事で、その鉋が来るのを持っています。






試し切り用の影打ちした鉋はテスト用として、
普通に作る物と同じ様に熱処理して作ったもので、
試し削りの途中報告を頂きました。

砥いだ感じは・・・良い
木材は・・・ヒノキ・スギ
永切れするか・・・もうすこし削ってみないと・・
切れ味は・・・ねちっこく吸いつくようで、木に食いつく
木のツヤは・・・非常に良い


 Q、お名前を出してもいいてすか?
A、よい
新潟県加茂市 渡辺文彦さん


ありがとうございます。






玉鋼の鉋ついて
(07.9.8)

私の先生の知っている人より玉鋼の鉋を頼まれ、
私に注文を頂きましたが、玉鋼が無いため先生から
刃物用に鍛錬して頂き、(C量を刃物用に)
影打ちも含み2枚作ってみました。

製作には、全ての工程で炭を使いましたが
炉が下吹き(炉坪しきで横吹きではない)の為
炭の消費が著しく激しく、炭を切っても切っても
間に合わない程でした。

完成させた1枚は注文された方に、もう1枚は
切れ味を試していただく為に近くの木工職の方に
を預けしています。

また、報告したいと思っております。







*球状化セメンタイトの刃物について


よく「球状化セメンタイトの刃物はきれます」という方がいますが、
それは、一概には言えないと思います。
なぜなら、セメンタイを網状から球状化にするのは
切れ味を出すためでなく、欠けにくくするためなのです。

材料学の本には網状だと網の線に沿って欠ける恐れがあるため
球状化にする必要があると書いてあります。

現に火作り(鍛え)をしなくても、熱処理だけで球状化できます。
例えば、鍛造用の大きな型や車に使っている部品などの一部は、
大きな工場で大量生産している又は材料(品物)が巨大なための、
私たちが火作り(鍛え)のようなやり方では追いつかないため
熱処理で球状化にしています。(やり方は専門書に書いてあります。)

ですから、「球状化セメンタイトの刃物はきれます」ではないのです。
ただ、顕微鏡で見てわかり易いようです。

ですが、火作り(鍛え)でこの球状化セメンタイトを出すのは
とても大変で、温度や加熱回数(加熱して打ちまた加熱という具合)
で少しでも狂うとこれに成りにくいです。

では、何を信じたらよいかですが、信用出来る鍛冶屋さんに頼む
しかないと思われます。










*玉鋼について私が思うこと 





最近玉鋼使用の刃物、特に鉋が増えてきました。
私の所にも製作依頼がきまして、また島根県吉田村の
たたら操業で体験してきた事もあり、
今度は本格的に玉鋼について
調べ、いろいろな方々にお聞きしてきた事などを
まとめ書きたいと思います。

尚、これは本などをお借りし調べたり

、お聞きした事を私なりの今の所の答えとして出したものであり

、今後更に変わる場合があると思います。
また人によって違うい考えがあると思いますが、
そういった場合は、是非私に教えて下さい。
ここに書いた表現や言い方の間違いについてはお許し下さい。


玉鋼という語源は、明治の初めに、
大砲のタマを作る材料に使用した所から
この名前がついたようです。
 学者は玉鋼を和鋼、
包丁鉄(たたらで粗悪な鋼を脱炭させて打ち伸ばした
板状の鉄で、軟らかい)を和鉄と区別しています。


さて先ほどから玉鋼と言っていますが、これは
たたら炉で砂鉄を低温で溶かし(還元)
、一塊(ヒ、ひとりごとを参照)にしたもので、
低温で砂鉄を処理したため非常に純度が良く、
中でもマンガンと硫黄の量が少ないのが特徴で、
これが玉鋼の良さです。

さて、玉鋼は塊のままでは刃物用の鋼として利用
出来ないので、板状にする必要が有ります。

この板状にする方法として、折り返し鍛錬(刀鍛冶など)と
玉鋼溶解
(人によって呼び方は違うと思いますが)の
2種類が考えられます。 一般的には折り返し鍛錬が有名で、
玉鋼と言うとこれを思う方が多いのではないでしょうか。




折り返し鍛錬とは素材(玉鋼の塊)を水べし→小割→積み沸かし
→折り返し鍛錬(下鍛え)の工程を経て板状にした物です。


しかし、この場合炭素量が一定になりにくい、玉鋼(塊)の単価が高く
また製作に手間がかかる(製品価格上昇)が考えられる。
まず、玉鋼が作られた時(たたら操業)の炭素含有量が一級と二級では
違いますし、たたら炉の状態でも変わってきます。
また、折り返し鍛錬の作業によってでも、積み沸かし折り返しをした
数だけ炭素が抜けて行き、けして増える事は無く、
刀の炭素量は折り返しが終わった時に
0.55〜0.65ぐらいの炭素量(日立白紙は、1.00〜1.40)になります。
(日本刀の理想的な炭素量は0.6%だそうです。)
こう言った事から、いつも同じ炭素量を出す事は非常に難いと思います。
(注意)刀鍛冶によっては、炭素量を上限出来る方が居られるそうです。

次に、折り返した時に層が出来、刀のようなハマグリ刃と違い
鋭利に刃を付けた場合、層の影響が出るとも考えられます。 

こう言った事から、いつも均一した切れ味を目指す
鑿や鉋など折り返し鍛錬の玉鋼は向かないのでは?

東京のある有名な方からお聞きしたのですが、
『石堂寿永さんは生涯玉鋼の刃物しか作らなかったそうですが、
弟子の千代鶴是秀さんと石堂秀一さんには、均一した洋鋼
(現在一般に使われているような溶解鋼)
使用するように遺言をしたそうです。』

この事から言っても、洋式製鋼法の方が大体いつも決まった
5元素の成分で層が無く、その鋼から作る製品は製造法が
間違いが無ければ、均一した
鑿や鉋などが出来ると思います。




さて、次に玉鋼溶解ですが、これは玉鋼をもう一度
炉つぼで溶かし板状にした物で
、炭素量もある程度均一化して鋼にも
層が出ず、現在一般的に使われている鋼によく似ていると思われます。
しかし、せっかく低温溶解して玉鋼を作ったのに、そのいい所
(純度の良い所)を高温であらためて溶かす事により
溶鋼(現在一般的に使われている鋼で白紙など)
とあまり変わらない様に思えますが?
(でも多少は良いと思いますが。)



今現在、玉鋼使用と明記されている何パーセントかの製品は
実際は玉鋼を使用せず、全く違った鋼やそれに近い鋼を(日立白紙など)
玉鋼と表示して販売している場合があります。
玉鋼は上で書いたように、鍛冶屋さんもその様な高度な
技術が必要ですし、素材も高価な物ですから
信頼できる方(鍛冶屋さんなど)の製品が良いと思います。

以上、私の思う事を書いてきましたが、
玉鋼には不思議な魅力があると思います。
軟らかいのに硬い(砥石で砥いだ時の感じ)という、
不思議な感覚の有る刃物を出来るなら自分の手で
作ってみたいと思いました。







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